トム・アット・ザ・ファーム

 

感想

今回は他人の脚本で撮っていて、いつもの強烈なビジュアル表現は控えめ、演出もぐっと抑制された仕上がりに。

その意味ではドランらしさは薄まったという言い方もできるけど、自分は逆にこれっくらいの「普通の映画」なバランスの方が天才の真っ当な天才ぶりが発揮できていて好ましいと思えました。

他人の脚本とは言っても、相変わらずゲイ要素はぶっこんでいるし、フランシスとトムの関係性なんて十分に特殊なんだけど。(過去にそういう経験あるんだろうか)

舌を巻くのが、そのフランシスのキャラクター造形。

ギャングのボスとか、悪徳警官みたいな、わかりやすい「悪」ではなく、ただただ単純に純朴な乱暴者。

ジャイアンがそのままこじれて大人になったような奴。

それも、あのような保守的な方田舎に生まれて、一見して物分かりが良さそうだが抑圧的な母(あのビンタ!)弟と比較されて育った青年なら(良い歳して二人暮らし)、たしかにあんな感じになってもおかしくないと思わせる説得力があります。

あのマッチョで一見普通っぽいビジュアル含めて完璧!!(ああいう人、いそうだよね…)

彼は弟にも母親にも、愛憎入り混じった複雑な感情を抱いているのが容易に想像できました。

そして特殊な愛情ゆえに、突然現れたトムの中にギョームを同一視して、一緒に暮らしたいと思ってしまった気持ちもなんとなく理解できる気がします。

そして主人公のトム本人も、フランシスの中に死別した恋人の「匂い」を感じ取ってしまったのだから、たまらない。

もう、愛情と憎しみが混然入り混じっている!

普通に見ると、途中で出てきたサラ(仮名)だけが常識人だったことがわかる(ヤリマンだけど)。

これだけ特殊な人たちのやりとりなので、当然のように特殊な状況になってしまうわけで、でも前述したようなリアリティーがあるので「作り話」とは思えない映画でした。感想